其の七(最終話)


ドビュッ!ドビュウウウウゥゥゥゥゥゥーーーーーッ!!
「う!うぅぅ…うむぅっ……!!」
……ドサァッ。

必殺技を放ったリフトマンは、それと同時に大量の精液を放出しながら前のめりに倒れ込んでしまった。
戦闘員によって射精直前まで扱き上げられていた男根は、必殺技を放つ瞬間、ぱんぱんに張った亀頭の
敏感な部分がブリーフの裏地で擦れ、その刺激によって射精してしまったのだ。
ドビュッ!…ドビュッ、ドビュッ…ビュッ!
「うっ…む、むうぅぅっ…!く…くそぉ…っ!」
地面に突っ伏しながらも、何とか起き上がろうと四肢に力を込めるリフトマン。
その間も射精は止まろうとしない。溜まりに溜まっていた精液は、後から後から溢れ出してくる。
ビュッ!ドビュッ…ビッ!…ドプッ、ドプッ!
「は…あっ…うぅっ…おお…あがぁっ!」
大量の精液はブリーフの布地から溢れ出し、青い光沢を放つリフトスーツまで浸透して、その股間部に
汗とは別の染みを作っていった。
「はぁ、はぁ、はぁ……う、うむぅぅ…っ!」
全てのエネルギーを使い果たし大量射精までしてしまったリフトマンは、前のめりに地面に倒れたまま
起き上がることも出来ず、青いスーツが食い込んだ大きな尻を突き出しながら四つん這いの体勢で、
大きな体をビクンビクンと震わせながら快感に耐える事しかできなかった。

ゴオオオォォォォオオオオオオッ!!!
轟音とともに回転しながら放たれた光のバーベル…リフトマンの必殺技、超重密度バーベルアタックは、
その軌道上でトカゲリアンから発射された巨大な尻尾の槍を粉々に粉砕、なおも威力を衰えさせず、
そのまま真っ直ぐにトカゲリアン本体を目指していた。
「ゲリリッ!?このオレ様の必殺技が!?デスマーダーの最強怪人、トカゲリアン様の必殺兵器がっ!?
そんな、そんなバカなぁーっ!?」

ピカァァァァァァーーーーッ!

ドッゴオオオオオオォォォォォォォオオオオオーーーーーンッ!!!

トカゲリアンの断末魔の叫びと同時に、巨大な光のバーベルが到達し大爆発を起こした。
「う……や、やったか…。」
ようやく射精が治まり始めたリフトマンは、前のめりに倒れたまま前方の爆煙を見やった。
徐々に爆発の煙が晴れていく…………。

「…………ゲーリゲリゲリゲリィーーーッ!!」
「なっ…なにぃ……っ!」
なんとそこには、頭の角が折れ全身傷だらけになりながらも、トカゲリアンが立っていたのだ。
「ゲリゲリ…まだだ…まだオレ様はやられていないゾ…ゲリィ…。」
リフトマン渾身の超必殺技も、やはり万全の状態ではなかった為かその威力を発揮しきれていなかった
のである。
「くっ…畜生っ!」
リフトマンは歯を食い縛って起き上がろうとするが、その逞しい体をワナワナと震わせるだけでどうする事
も出来ない。汗で密着した青いスーツが食い込んだ大きな尻を突き出しながら、無様に地面に這い蹲る
ことしかできなかった。
「ゲリゲリィ…そこで待っていろ、リフトマン…今からキサマにトドメをさしてやる…ゲリリィ…。」
トカゲリアンはゆっくりと、だが一歩一歩確実に、倒れたままのリフトマンに近づいて来る。
「ぐぅっ……畜生っ!…畜生ぅっ!」
リフトマンは地面の土を掻き毟るようにしながら、悔しさにその全身を震わせた。
(畜生っ……む、無念…っ!)
リフトマンが覚悟を決めようとしたその時。


キイィィィィィィーーーーーンッ!

突然、リフトマンの背後から青い光線が放たれ、前方のトカゲリアンに命中した。

「ゲリッ!?……バ、バカな…オマエは……」
それが最強怪人トカゲリアンの最後の言葉だった。
ドッガアアアァァァァァアアアーーーーーンッ!!!
青い光線に射抜かれたトカゲリアンは、今度こそ本当に粉々になって消し飛んだ。

「……いったい、なにが…!?」
訳が分からないリフトマンは、ゆっくりと振り向きながら自分の背後に目をやった。
「!?………な…っ!?」
リフトマンは目を見開いて驚愕した。
そこには青白い光に包まれて、死んだはずの橋野義人が立っていたのである!
「…義人っ……お前…な、なんで……!?」
義人の腹部に傷跡は無く、作業用の白いツナギまでも元通りになっている。
右手を前に出し、前方を無表情に見つめているその姿勢から、先程の青い光線は義人から放たれたもの
であることは明白だった。
その無表情のまま、青白い光に包まれた義人が口を開いた。
「私の名はスピカ………貴方に、リフトマンに変身する為のヒーローパワーを与えた星の者です。」
スピカと名乗るその声は、義人のものではなかった。男でもあり、女でもあり…その両方でもあるような、
どこか中性的な声であった。
「スピカ……俺にヒーローパワーをくれた星の人間…。」
リフトマンは、初めて変身した時のことを思い出していた。
「私達の星は否干渉条例によって、直接この地球に影響を及ぼす事は出来ません。ただし、地球が外部
からの侵略の危機に晒された時、この星の人々の手助けをするという意味で、選ばれた人間にパワーを
与えることが出来るのです。」
「…そういやぁ、そんなこと言ってたような……。」
「今回、この若者は貴方を庇って死にました。」
「!……くっ!」
ぼんやりとスピカの話に耳を傾けていたリフトマンは、その言葉を聞いた途端、胸が締め付けられた。
「この若者の、貴方を、リフトマンを助けたいという強い願いは、私達の星にまで届きました。この若者も
また、貴方と同じように平和を愛し、正義を貫く尊い心を持っているのです。」
「…義人……。」
「本来、この闘いに巻き込まれなければ死なずに済んだこの若者を、私達は生き返らせることにしました。」
「なっ!?…本当かっ!?本当にそんなことが出来るのかっ!?」
倒れたままスピカの話を聞いていたリフトマンが、身を乗り出す。
「ただし、一部の記憶と引き換えに……………」
その言葉を最後に、無表情で声を発していた義人の目は閉じられ、全身を包んでいた青白い光は消えた。


グラッ。

「義人っ!」
倒れ掛かる義人を、反射的にリフトマンはボロボロの体で抱きかかえた。
ここにきてようやく立ち上がることが出来たのだ。
「義人っ!しっかりしろっ!…おいっ!」
必死に義人の体を揺さぶるリフトマン。やがて義人は、眠そうな声を上げながら目を覚ました。
「う…う、んん…あれ?…ここは……って、あーっ!リ、リフトマンっ!?」
「ふぅ…気がついたか?」
ほっと胸をなでおろし、安堵の表情を浮かべるリフトマン。
「う、うわっ!スッゲ!本物のリフトマンだっ!…オレ、大ファンなんスよ!」
「!?…お、おう……。」
リフトマンの頭に、スピカの最後の言葉がよぎった。
(そうか…こいつ、リフトマンの正体が俺だってことを覚えていないのか)
そうだ、これでいい、とリフトマンは微笑んだ。
「…っと、リフトマンがいるってことは、まさか、また悪い怪人が現れたんスかっ!?」
「ん?…お、おう!……だが、もう追っ払った。」
「さぁっすがぁ!リフトマンは無敵っスねっ!」
(はは…お前のおかげだ、義人。)
リフトマンは目の前ではしゃぐ義人を、本当に嬉しそうに見つめていた。

と、その時、不意に義人が顔をしかめながら言った。
「うん!?…くんくん…なんかこの辺、臭くないっスか?」
「え?…あ、そ、そうか!?」
日焼けした厳つい顔を少し赤くしながら、リフトマンが聞き返す。
「汗臭いのはわかるんスけど、なんかこう…その、イカ臭いっつーか…。」
(んぐっ!)
リフトマンは焦り、一歩二歩と義人から距離をとる…。
そんなリフトマンの股間部に、大量の精液が溢れて作られた染みがあるのを、義人が目ざとく見つけた。
「リ、リフトマン!……それって…!?」
義人が口をあんぐりと開けながら、リフトマンの盛り上がった青いスーツの股間を指差す。
「ち、違うぞっ!違うっ!…これは、だな…その……さらばだっ!!」
厳つい顔を真っ赤にしながら、リフトマンは誤魔化しきれずにその場から猛ダッシュで逃げ出した。
いったいどこに、そんな力が残っていたのか…と思われるほどの速さであった。



翌日。
リフトマンの活躍によってデスマーダーの「東京壊滅作戦」から間逃れた町には、いつもとおなじ平穏な
朝が訪れていた。
それはこの小さな自動車整備工場…森山モータースでも同様であった。

「うぃーっス!おやっさ……社長、社長っ!聞いて下さいよぉっ!」
橋野義人の元気な声が、整備場に響き渡る。
「おお、どうしたぁ?」
湯飲みに注いだ熱いお茶をすすりながら、森山厳介が聞き返す。
「オレ、昨日っ、リフトマンに会ったんスよっ!」
「ぶふぉっ!」
厳介がお茶を噴き出す。熱いお茶が白いツナギの前を濡らしていく。
そんな厳介にはお構いなしに、義人は話を続けた。
「いや〜、それが変なんスよね〜。オレ、なーんも覚えてないんスけど、いつのまにかどっかの工場跡か
なんかに行ってて、そこでリフトマンに会って、そんでもって突然リフトマンが逃げ出して……。」
「ご、ごほっ、ごほっ!…ん…そ、そいつは大変だったなぁ。」
よくわからない返事をしながら、厳介が立ち上がる。
「!!……痛っ!」
そのとき厳介は、足の痛みに少しよろめいてしまった。
「?…社長?大丈夫っスか?」
義人が心配そうに覗き込む。
「お、おう…大丈夫だ。」
リフトマンの回復能力といえども、昨日の激しい闘いの傷は簡単には治らないようだった。
(まいったな…こいつは仕事にならんぞ…。)
厳介は仕方が無い、というふうに大きく溜め息をつくと、痛む足を庇いながら表に出た。

「じゃぁ義人、そういうわけで後は頼むぞ!」
そう義人に声をかけると、ゆっくりと歩き出す。
「えぇ!?『そういうわけ』って、どーいうワケっスかぁ?だいたい、仕事ほったらかしてどこに行くんスかぁ!?」

義人の当然の質問に、厳介は振り向きざまにニヤリと笑って答えた。



「パチンコだ、パチンコっ!」



おわり

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